ヨーロッパの

バスケットボール

欧州バスケの強さを探る

全て現地訪問して視察・調査

   欧州強豪国ほぼ網羅

イタリア編1 イタリア編2 イタリア編3 イタリア編4

【イタリア編 1】

0.イタリアってどんな国?

 イタリアは南ヨーロッパの国の一つです。面積は約30万平方キロメートルで日本の約8割です。人口は約6000万人。主要産業は執筆時点では、機械,繊維・衣料,自動車,鉄鋼。首都はローマ。通貨はユーロ。気候は主として地中海性気候。

 バスケットボールの面では、代表チームは男子は世界でも強豪。イタリアの1部リーグのセリエAは欧州でも比較的高いレベルにある。上位クラブは資金量も比較的多い。ただ私見では1部リーグであっても下位クラブとは予算・戦力等の差が大きい印象。

1.停滞期から黄金期へ 〜オリンピア・ミラノ〜

 ミラノはイタリア北部にある大都市である。日本からの観光も人気の都市だが、ここにはバスケットボールで歴史のあるビッグクラブがある。スポンサー名等を冠したクラブの名称はシーズンによって変遷はあるが、近年について言えば2004年以降はアルマーニに関連するブランド名がいくつか付けられている。2019年秋時点では「AX アルマーニ エクスチェンジ ミラン」である。 ここでは、視察の際に現地で通称として使われていたことと、オールドファンにも親しみがある名称と思われることから、「オリンピア・ミラノ」と表記する。

 オリンピア・ミラノはイタリア男子一部リーグにおいて歴代で最も優勝回数の多いクラブである。イタリアでは老舗かつ強豪クラブと言える。一時期なかなか結果が出せない年代があったが、現オーナーに変わってからはまた力を付けてきて新たな黄金期と言っても良い状態である。オリンピア・ミラノはミラノ市内の地下鉄駅から徒歩圏にアリーナやクラブのオフィスがある。ちなみにイタリア一部リーグはサッカーと同じく「セリエA」とも呼ばれている。

 オリンピア・ミラノの育成組織はU−13、U−14、U−15、U−17、U−19の5チームがある。全て男子で女子のチームは無い。育成組織のチームの練習は主にメインアリーナに隣接するサブアリーナで行われる。原則としてオリンピア・ミラノの育成組織のチームの練習時間は2時間である。事情により1時間で行われる時もある。育成組織のチームの練習を視察したのでその様子を記したい。

*写真 当時のホームアリーナ

 U−17チームの練習の様子である。ある月曜日の練習について記載する。この日はドリブルの個人スキルがメインテーマであった。最初に、ウォームアップを兼ねてドリブルをしながら腕を大きくまわしたり、ジグザグに細かいステップを踏んだり、ダイナミック・ストレッチングの要素も含めながら身体を動かした。続いてスタティック中心のストレッチングをしたあと、3グループに分かれて個人スキルのドリルを行う。3グループそれぞれにコーチが付き、各コーチがそれぞれ別なドリルを提示する。まずこのステーションドリルの一つ目のグループは、補助の小さいボールを使ったドリブルのドリルをどんどんやっていく。またサイズの違うボールを使うドリルも行なっていた。

 二つ目のグループは、フックシュートが主眼である。マイカンドリルをこなしたあと、コーチからパスをもらいターンしてフックシュートを打つ。ターンする方向を変えたものも行なう。三つ目のグループは、ボールのレシーブがドリルの狙いとなる。Vカットでボールをレシーブし、ドリブルしてジャンプショットを打つ。最初はディフェンスはダミーで付くが慣れた後は、ライブでディフェンスする。

 さらに、ミドルからローポストのオフェンスを利用して飛び出してくる。その際コーチはディフェンスのコース取りを見て飛び出す方法を指導する。それぞれのステーションでは9〜10分程度でグループを入れ替える。ここまで全体的にドリブルは腰を低くして行うことを徹底している印象を受けた。

 ステーションドリルが1周した後は、1 on 1で一人抜いた後に、二人目のディフェンスに応対する練習を行った。コーチがダミーのディフェンスをしていた。その次に、2ボールでのパッシングドリルを挟んで、ピックアンドロールのドリルを行った。ここでは、スクリーナーとそのディフェンスがダミー(コーチ)で、スクリーナーのディフェンスの動きに応じて、ユーザーが対応の仕方を変えていく。

 その後フリースローを挟み次のドリルに移る。ここではボックスアウトをかわしてオフェンシブ・リバウンドを取りにいくというドリルを行っていた。途中で重いボールを使うなどもしていた。これでこの日の練習は終了で、練習時間は一時間ちょうどであった。全般的に、日本における典型的な練習に比べると、選手自身が選択する場面が設定されているドリルが多い気がした。

*写真 イタリア一部リーグの試合の様子(視察当時)

 では、オリンピア・ミラノはどのような哲学・方針で子どもたちを指導しているのだろうか。オリンピア・ミラノのユースセクターのテクニカルマネージャーを務め、さらにU−17チームヘッドコーチとU―19チームコーチも兼務していたマルコ・ガンディーニ氏にインタビューを行った。

 彼によると、育成組織の子どもたちを指導する上で最も大事にしていることは二つある。一つ目は両手とも器用に使えるようにすることである。二つ目は、一気に難しいことを教えないで、ドリルをシンプルにして少しずつ段階的に教えることであるという。なるほど、練習の様子を見ると、左右の手を均等に使わせており、また、ドリルは分解して教えていることがわかる。また大きい選手の育成についてガンディーニ氏に聞いたところ、その選手のフィジカルコンディションの状況によるものの、オールラウンドに育てる、というのが原則のようだ。実際、練習ではポジションをはっきり決めていないこともあって、身長等によって練習内容を区分けはしていなかった。

 また、イタリアの育成組織のチームはある問題を抱えているという。それはセリエA(イタリア一部リーグ)のことで「スペースが無いこと」だという。つまり、イタリア人選手の契約枠が少ないことだという。セリエAのロスター(契約選手)12名のうち、アメリカ人枠が3名、アメリカ以外の外国人枠が3名なので(当時)、イタリア人の一番いい選手が7番目になってしまうからだ。ガンディーニ氏いわく、プロであっても選手が成長するためには5番目までの選手に求められるような責任を引き受けることが必要で、そして何より試合でボールを触ることが必要だからとのことであった。

この記事の関連動画「ヨーロッパのバスケットボール[イタリア編1]オリンピア・ミラノ」はこちら↓

関連動画「ヨーロッパのバスケットボール[イタリア編2]イタリアの育成年代のシステム」はこちら↓

*オリンピア・ミラノのU-15チームの練習とU-14チームの公式戦なども視察したが、それは別な機会に記したい。

*イタリアでは「モンテパスキ・シエーナ」(当時)にも、同クラブ全盛期に視察・調査した。その記録も別な機会に記したい。

*イタリアではバスケットボール連盟の幹部にイタリアの育成システム、コーチライセンス制度、プロリーグ等について詳細にインタビューしたのでその記録も別な機会に記したい。

*イタリアではローマ近郊のクラブの育成組織の練習を男女とも視察したのでその記録も別な機会に記したい。

イタリア編1 イタリア編2 イタリア編3 イタリア編4

---

スペイン フランス イタリア セルビア スロベニア クロアチア チェコ トルコ リトアニア ギリシャ ロシア

 

ヨーロッパのバスケットボール 総合トップページ

---
文責:出町 一郎(でまち・いちろう)
[バスケットボール研究者・バスケットボールコーチ・大学講師]

●東京大学大学院博士課程出身(スポーツ科学,教育学)
● 元プロバスケットボールチームコーチ

*このページに関するお問合せ euro@demachi.net

---

The School of Basketball PC用詳細ページ

The School of Basketball スマホ用簡易ページ

東京ロケッツ PC用詳細ページ

東京ロケッツ スマホ用簡易ページ

横浜セルティックス PC用詳細ページ

横浜セルティックス スマホ用簡易ページ