【イタリア編 3】
3.小さな町から欧州を代表するクラブへ 〜モンテパスキ・シエーナ〜
イタリアの中部にシエーナという町がある。大都市で言えばローマとフィレンツェの間に位置する。シエーナは人口約5万人程度の小さな町であるが、ここにあるクラブは2000年代から2010年代中盤までバスケットボールではイタリアはもちろん欧州の強豪としてその名を知らしめていた。実際、イタリア一部リーグで2003-04年シーズンから2012-13年シーズンまでの10シーズンで7連覇を含む8度の優勝を記録している。ユーロリーグでも2000年代から2010年代にかけて4度のベスト4を記録した。
この強かった時代のこちらのクラブは「モンテパスキ・シエーナ」と呼ばれていた(視察・取材時にこの名称だったこと並びにこの名称の時代に欧州トップレベルだったことから敬意も含め、本稿ではこのクラブ名を使用する)。モンテパスキというのは、シエーナの町にある銀行「モンテ・デイ・パスキ・シエナ」にちなんでいる。この銀行は世界最古の銀行で1472年に創業し、クラブの当時のメインスポンサーであった。
モンテパスキ・シエーナのアリーナの座席数は約5000である。人口が5万人程度の町で5000席のアリーナである。この町におけるこのクラブやバスケットボールの存在の価値や重みがわかるのではないだろうか。
写真 シエーナのアリーナ(ユーロリーグでの様子)
このクラブはトップチームを筆頭に育成組織の各年代のチームが編成されているのは典型的な欧州の他のクラブと同様だが、全てのチームが同じこのアリーナで練習しているという特徴がある。またモンテパスキ・シエーナは男子だけのクラブで、女子のチームは無い(ただし、女性が参加できるエアロビクス等ができるスタジオなどが同じアリーナ内にある)。
モンテパスキ・シエーナの育成組織には、U−19、U−17、U−15、U−14、U−13がある。このように年代ごとにのいくつかのチームがあるのは欧州諸国と同様であるが、特徴の一つは同じ年代でも二つチームがある場合があることだ。例えば、U−17にはファーストチームとセカンドチームがある。ファーストチームは選抜された12〜14名前後の選手で構成され、当時はシエーナとその周辺だけではなく、イタリア中から優秀な選手が集まっていたという。年によってはシエーナ周辺以外の出身選手が過半数を占めているときもあるとのことだ。セカンドチームはファーストチームから漏れた選手で構成されている。また、異なるカテゴリーのチーム、つまり例えばU−19とU−17を兼ねている選手もいるという。
(つづく)
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*イタリアではバスケットボール連盟の幹部にイタリアの育成システム、コーチライセンス制度、プロリーグ等について詳細にインタビューしたのでその記録も別な機会に記したい。
*イタリアではローマ近郊のクラブの育成組織の練習を男女とも視察したのでその記録も別な機会に記したい。
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文責:出町 一郎(でまち・いちろう)
[バスケットボール研究者・バスケットボールコーチ・大学講師]
●東京大学大学院博士課程出身(スポーツ科学,教育学)
● 元プロバスケットボールチームコーチ
*このページに関するお問合せ euro@demachi.net
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