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バスケットボール

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【スペイン編 1】

0.スペインってどんな国?

 スペインはヨーロッパの南側に位置する国です。首都はマドリード(マドリッド)で、主要産業は執筆時点では自動車,食料品,化学品など。通貨はユーロ。気候は地域により、海洋性気候、大陸性気候、地中海性気候など。人口は約4700万人(2019年1月現在)。面積は50.6万平方キロメートル(日本の約1.3倍)。

 バスケットボールの面では、代表チームは男女とも世界トップレベル。国内の状況は、スペイン男子一部リーグ(ACB)は国内リーグとしては欧州トップクラスのレベル。2部リーグもレベルが高い。欧州で2部でこのレベルの国は少ないと思う。

1.ヨーロッパの「レイカーズ」 〜FCバルセロナ〜

 FCバルセロナと言えば、サッカーのクラブとして認識している人がほとんどであろう。確かにFCバルセロナは世界で最も有名なサッカークラブの一つと言えるだろうが、クラブ内にはバスケットボールチームもあるのである。さらに、ハンドボール、ローラーホッケー(ローラースケートで行うホッケー)、フットサルのチームも含んでおり、実は総合型スポーツクラブである。「バルサ」の愛称で知られている。その名の通り、スペイン第二の都市であるバルセロナに存する。

 FCバルセロナのバスケットボールチームはヨーロッパを代表するビッグクラブの一つである。またヨーロッパでもっとも有名なバスケットボールチームの一つである。有名なだけではなく、欧州諸国を視察・調査した範囲では憧れられている存在という印象である。ヨーロッパでは他国のクラブの育成組織などはFCバルセロナに勝つと例えその大会に優勝しなくても喜んでいたというのをいくつか聞いた。私見では、FCバルセロナは「ヨーロッパのレイカーズ」と言える存在なのではないかと感じている。また、クラブのGM、そしてバスケットボールセクションのGMと話した際には、いわば”バルサ愛”のようなものを強烈に感じた。

 チーム構成としては、トップチーム、セカンドチーム(2軍にほぼ相当)、育成組織として、U―13、U―14、U―15、U―16、U―18のチームがある。以前は全て男子チームであったが近年は女子のチームもできてきつつある。小学生のチームは無い(小学生と4歳以降の子ども向けのバスケットボール・スクールはある)。ちなみに、FCバルセロナの育成組織のチームの練習は多くて週4−5回で、1回あたりの時間は1時間〜1時間半であった。

 トップのチームはスペイン一部リーグ(ACB)で優勝多数であり、ユーロリーグの優勝経験もある。スペイン代表選手もこれまで多く所属していた。年俸総額も欧州でトップクラスで日本のトップレベルのチームの数倍から十倍以上あるとされる。チームの運営に関しても潤沢な資金が使われているようだ。トップチームのアリーナは「パラウ・ブラウグラナ」という名称で、7585席という大きなものである。「パラウ・ブラウグラナ」というのは青とえんじという意味のカタルーニャ語でクラブカラーのことである。有名なサッカースタジアムの「カンプ・ノウ」の近くにある。原則としてトップチームはここで練習をし、ホームゲームはここで開催される。色のことで言うと、サッカーの方で見たことがある人もいるかと思われるが、バスケットボールのチームでもユニフォームは青とえんじを基調としている(上部の写真はこのパラウ・ブラウグラナでの公式戦を撮影したものである)。

 育成組織の方は、スペイン中はもちろん、ヨーロッパ中、世界中から優秀な選手が集まってくる。バルセロナやバルセロナのあるカタルーニャ州あるいはその周辺の小学生の試合を毎週観に行き、優秀な小学生選手をチェックするリクルート担当スタッフもいるくらいである。FCバルセロナの育成組織のチームは欧州では珍しく上達することだけではなく勝利を期待されている。筆者が視察した範囲ではスペイン国内はもちろん欧州内でもここのクラブだけである。育成組織は“カンテラ”という別称もある。

  写真 FCバルセロナのホームアリーナ

(*練習時に撮影。お客さんが入っていないとこのようにFCBの文字が見える)

 トップチームのある日の練習の様子を記す。この日は月曜日で、前日の日曜日にACBの試合がホームであった。18時30分に練習が始まり、まずコートを軽く走り出した。4分ほど走ったあと、笛が鳴りいったん集合する。コーチが話しをして、また走り始める。

 その次はシューティングである。二人組になり、ウイングの選手がミドルポストの選手にパスをする。パスをした選手はコーナー方向に移動する。ミドルポストの選手は攻めるしぐさを見せる。その後、アウトサイドの選手にボールを戻す。もう一度インサイドにいる選手がパスをもらってシュートをする。次は途中まで同じでアウトサイドの選手がリターンパスをもらった時に外角シュートを打つ。その次はコーナー付近でリターンパスをもらうまでは同様で、その後、センターライン側からゴール正面に向かってドリブルをしてミドルポストの選手にパスをして、もらった選手はシュートをする。その次はまた最初の配置は同じでファーストパスをもらったミドルポストにいた選手はペイントの中にドリブルをする。そしてコーナーからベースラインカットをした選手にパスをしてシュートをさせる。

 ここまで練習開始から17分が経過した。この次はウォークスルーである。いくつかのセットを確認していった。7分ほど行った。そのあと、トレーナーの指示に従ってストレッチングを始めた。6分ほどかけて全身を伸ばしていった。その次は少し走りながら身体を動かしていく。ステップを踏んでから走ったりするなどして身体を温めていく。

 これが終わるとスリーメン・ファーストブレイクドリルを行った。真ん中のレーンを走る選手がシュートをしていた。これに続いて、フルコートの3 on 2から2 on 1を行う。この次は3 on 2 + 1などと言われているドリルでセンターポイント付近から3人目のディフェンスが加わっていく。これの次は、フルコートでの3 on 3である。ファーストブレークを積極的に狙う。途中から、速攻よりもどちらかというとコントロールしたオフェンスを中心に攻めていた。休憩のあと、フルコートで5 on 5を行った。ほぼ1往復ごとに止めてポイントを確認していく。最後の5分くらいは3―2ゾーンの攻防を行っていた。

 この日はスポンサー関係者向けの公開練習で練習自体はここまでの約1時間20分ほどで終了し、その後この観戦者向けのイベントが始まった。この日は親子が多く来場しているようであった。MCのような人とチアリーダーが何人か出てきていた。

  写真 公開練習後の選手サイン会

(*選手は椅子に座ってサインを書いているのですが、ファンが殺到しているので選手が見えません)

 このイベントのまず最初は、何人かの選ばれた子どもと選手が一人ずつペアとなり、二組が競うシューティングゲームを行った。距離によってポイントが変わり、ブロックからのシュートは1ポイント、エルボーからのシュートは2ポイント、3ポイントシュートは3ポイントとし、1分間にどちらのペアが多くのポイントを得るかというものである。次はダンクコンテストである。今のゲームに参加した子どもたちが審査員となり、選手が次々とダンクをしていく。BGMの音楽をかけて盛り上げていた。これが終わると審査員をした子どもたちにボールとレプリカユニフォームがプレゼントされていた。そして選手と記念撮影をする。その後、観客席にいた人たちをコートに降ろして選手と全員で記念撮影をした。最後に選手によるサイン会を行った。色紙を持った子どもたちが選手の前に列を作り、サインをもらっていった。イベントはこれで終了で、所要時間はコートでの練習開始から約2時間であった。

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文責:出町 一郎(でまち・いちろう)
[バスケットボール研究者・バスケットボールコーチ・大学講師]

●東京大学大学院博士課程出身(スポーツ科学,教育学)
●元プロバスケットボールチームコーチ

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