【クロアチア編3】
3.財政危機を越えて 〜ツィボナ〜 [プロチーム編その2]
ツィボナのプロチームの続きである。クロアチア編その2で紹介した練習と同日の夜の練習である。試合の前々日の2回目の練習の様子である。
メンバーは11人であった。まずドリブル無しの軽めの5 on 5に取りかかった。リラックスした雰囲気で6分ほど行ってストレッチングに移行した。その後3人でのファーストブレーク・ドリルを行った。コンディショニングが主目的と思われる。少しずつスピードを上げていった。フリースローを挟んでハーフコートの 5 on 5に移った。午前中に練習したホーンズからのセットが良く目についた。16分ほど続けたあと、ペアになりシューティングを行った。10分シュートを打ったあと、今度は、2−3ゾーン・ディフェンスの動きやローテーションを確認した。主にハイポストでのスクリーンを利用するセットに備えていた。これをしばらく洗練させたあと、もう一度ペアでのシューティングを行いこの日の練習を終えた。午後の練習時間は1時間45分であった。
ツィボナの財政面について述べる。まずクロアチアの国内経済を俯瞰すると、クロアチアは2009年からマイナス成長に転じ、2014年までマイナス成長またはゼロ成長となった。特に2008年のプラス2.1%から2009年のマイナス7.4%への成長率の落ち込みは大きく、クロアチアのスポーツにも影響が出た。
その影響が最も反映されたと思われる2010−11シーズンのツィボナの様子はこのようである。ツィボナは上記のようなクロアチア経済の落ち込みを受けて、このシーズンはいくつかのスポンサー企業が撤退しスポンサーの数が減ったり、あるいは撤退しないまでもスポンサーフィーが減額となった契約もあり、クラブの運営予算が前年比約30%減になってしまった。支出を減らす方策の一つはまずは外国人選手との契約の見直しである。プロチームの外国人選手は即戦力で主力選手というのが相場なので、したがって給料も高い。そのため、外国人選手を減らすと戦力は落ちるもののコスト削減の効果は大きい。
写真 ツィボナのプロチームのユーロリーグのホームゲームの様子
当時のABAリーグの規定では一チーム当たり4名まで外国人選手と契約できた。しかしツィボナは一人にまで外国人を減らしていた。しかもそのアメリカ人選手はリーグ内でもスター選手になれるような実力には見受けられなかった。おそらく一人に減らした上でさらに、あまり高価(つまり高い実力がある)ではない選手を選んだようだ。この年のシーズン初め(12月くらいまで)の時点では、クロアチア国内の上位4クラブでも、ツィボナの他、カカザグレブ、ザダルがみな外国人選手は一人のみの契約で、ツェデビタだけが3人という状況であった。このことが象徴するように、2010-2011年シーズン当初の成績も低調でユーロリーグのファーストラウンドではツィボナは10戦全敗で姿を消した。
経営幹部からも話を聞いた。ジェネラルマネージャーは財政的に非常に厳しいということを話してくれた。ザグレブ市からの補助金等もあるがそれでも足りないという。支出の削減のため、上記の外国人選手との契約人数の減少をはじめ、自国のクロアチア人に関してもベテランではなく21歳の若手選手と契約して人件費を浮かすなど、経費削減に努めている。彼自身も数か月間給料を受け取っていない状況であるという。プロチームの練習の様子を実際に見た限りでは、灯りのせいだけではなく、練習自体も暗い感じで、沈んだ雰囲気が伝わってきていた。
---
*クロアチアの他のクラブの記録は別な機会に記したい。
*クロアチア・バスケットボール連盟幹部へのインタビューの結果は別な機会に記したい。
関連動画はこちら↓
---
スペイン フランス イタリア セルビア スロベニア クロアチア チェコ トルコ リトアニア ギリシャ ロシア
---
文責:出町 一郎(でまち・いちろう)
[バスケットボール研究者・バスケットボールコーチ・大学講師]
●東京大学大学院博士課程出身(スポーツ科学,教育学)
● 元プロバスケットボールチームコーチ
*このページに関するお問合せやお仕事のご依頼はこちらまでお願いします euro@demachi.net
---
The School of Basketball PC用詳細ページ