【チェコ編 1】
0.チェコってどんな国?
チェコは中央ヨーロッパの国の一つで、1993年にスロバキアと分離する形で成立した。人口は約1,000万人(2018年12月現在)、面積は約79000平方キロメートルで日本の約5分の1)である。首都はプラハ。通貨はチェコ・コルナ(2019年現在)。主要産業は執筆時点では(自動車を始めとする)機械工業,化学工業,観光業。大陸性気候。
チェコのバスケットボールはまずなんと言っても女子である。チェコ女子代表は2010年の世界選手権で準優勝している。また世界選手権では2006年の7位を除けば、全て4位以内の成績を残している。一方男子代表は、チェコスロバキアの時代は1960年ローマ大会5位、1976年モントリオール大会6位などの成績があるが、チェコになってからはオリンピックには出場していない。世界選手権(ワールドカップ)は2019年にチェコになって以来初めて出場し6位の成績を収め、古豪復活の兆しを見せた。国内リーグは男子は1クラブを除き、財政的・戦力的に厳しい状況。女子の国内リーグの方も1チームがかなり強く、それも欧州を制したこともあるくらいの水準である。
1.欧州女王にも輝く 〜USKプラハ〜
1-1.女子トップチーム
USKプラハはチェコの首都プラハにあるクラブの一つである。男女ともチームがあるが近年は女子の方が有名で、成績も良い。オーナーが女子チームに力を入れているとのことである。USKプラハのトップチームは男女ともチェコ一部リーグに所属している(2017年現在)。女子の方は2010年代は国内リーグはほぼ優勝しており、またユーロリーグでも優勝経験がある。男子のトップチームの方は2010年代は中位から下位の成績が多い。USKプラハをはじめとしたチェコのバスケットボールクラブの育成組織は、チェコが中央ヨーロッパに位置するということもあってか、旧ユーゴスラビア諸国と同様のハードな練習が一般的という。
USKプラハの練習の様子を紹介したい。まずは女子のトップチームの練習の様子である。この日は水曜日の午後の練習であった。選手は9人のみで、ユーロリーグのオールスター戦に選ばれた選手がいたり、怪我などで3人が欠けていた。ウォームアップのあと、シュートの練習をした(図1)。ハーフコートの3つの角に選手が立ち、そのうち2人の選手の中間のサイドライン沿いにコーチが位置する。#1がコーチへパスをして逆サイドのミドルポスト付近へ移動する。#2はトップオブザキーの方向へドリブルして#1へパス。#1はシュートを打つ。#2はコーチからパスをもらいすぐリターンパス。その後#2は#3からパスをもらいシュート。#3はフリースローライン付近に走り#1のうしろに並んでいた#4からパスをもらいシュートをする。ここまでがひとまとまりである。
そして、同じ配置から違う動きを2パターン行う。この3パターンを13分ほど練習したあとで、先ほどの3つの動きに1、2、3と番号を振って、コーチがランダムにその番号をコールをする。選手は即座にコールされた番号の動きを遂行する。少々難しい練習との印象であった。
図1 USKプラハ女子トップチームのドリルの例
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次に各自ボールを持ってのシューティング(2ポイントシュート)を3分ほど行い、休憩のあと、別のドリルに移る。ドリブルとそれに対するディフェンス、そしてインサイドへのフィードとシュートを組み合わせた練習である。二番目の段階として、選手をもう一人加えて、前段はほぼ同じで後段で2on2に移行するドリルになる。しばらくこの練習を続けたあと、休憩をはさんで1on1をする。コーチを含めて3人が横並びになったところから始めるものである。そしてその次の1on1は補助が二人いるものであった。
そのあとは選手が3人一組となり、ドリブルからのシュートフェイクをダミーのディフェンスをつけて行い、リバウンダーと合わせて順番にやっていく。6分ほど続けたあとはシュートに多少バリエーションをつけていった。この日の最後のドリルは、4グループに分かれてシューティングをするものだ。3ポイントシュート、1ドリブルからの2ポイントのシュート、2ドリブルからの2ポイントシュートの3種類のシュートを4ヶ所に分かれて打つ。一定の本数のシュートが決まったらローテートしていく。こうしてこの日の練習は1時間30分で終了した。当時、このUSKプラハの女子のトップチームのヘッドコーチはチェコ代表女子のヘッドコーチも兼務していた。
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*USKプラハの育成組織の様子などは「チェコ編2」に記載予定。
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文責:出町 一郎(でまち・いちろう)
[バスケットボール研究者・バスケットボールコーチ・大学講師]
●東京大学大学院博士課程出身(スポーツ科学,教育学)
● 元プロバスケットボールチームコーチ
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