【ギリシャ編 3】
3.熱狂的なファン 〜イリシアコスAO(その2)〜
(*ギリシャ編2のイリシアコスAOのホームゲームの様子の続き)
両チームのファンは太鼓を持ち込んでいて、それを使って応援をする。少なくとも音楽や楽器を使った応援という面について言えば、ヨーロッパではアメリカのように主としてホームチーム運営サイドが主導する応援ではなく、観客の方の主導で太鼓などを使って歌を歌ったり、声を揃えて決まったフレーズを大声で叫んだり、というようなスタイルが多いように思うが、イリシアコスAOのホームゲームのファンもそのようなスタイルである。
試合前に既にエキサイトした両チームのファンが観客席内で小競り合いのようになったが、すぐに警察官たちが割って入っていた。試合が始まると1Fの観客席の一番前のファンが紙吹雪のようなものをコート上に急に撒き散らした。試合は一時中断し、モップなどを用いて片付けたのち再開した(写真)。それが試合中に数回あった。そのたびに中断し、清掃をしていた。イリシアコスAO側の応援席の方に座っていた特定の観客が投げ込んでいたようだったが、誰が注意するわけでもなく、驚くわけでもなく、どうやら時折こういった行為はあるようであった。
写真 イリシアコスAOのホームゲームで紙吹雪を片付ける職員
試合の内容についてはイリシアコスAOは相手チームのナンバープレイを研究してきており、ファーストパスをディナイするなどプロフェッショナルのチームとしての最低限の準備のあとがうかがえた。イリシアコスAOは個人能力や身長でやや劣る分、チェンジングのディフェンスや、ディフェンスラインの上げ下げなど色々と工夫をしていた。
アリーナの設備などについて他に気づいたことを記す。この試合はギリシャ男子一部リーグの公式戦であり、原則としてプロフェッショナルのチームの試合であるが、電光掲示板が片方のゴールの後方にしか無かった。反対側のゴールの後方には電光掲示板自体はあるが故障のためか全く作動していなかった。そのような状態でもこの公式戦は実施されていた。またコート上のバレーボール用のラインもフットサル用のラインも消されていなかった。また、施設内に例えばホームチームのレプリカジャージやTシャツなどのグッズあるいは関連商品を販売するようなブースも無かった。
試合の演出面については、ほぼ何も準備されていなかったと言ってよいであろう。まず、チアリーダーのような人達やMCのような人はいなかった。また、ハーフタイムにはコート上で何もイベントが行われなかった。タイムアウト中には若干音質の悪い音楽がかかるだけでコート上に誰かが出てきて何かをするわけではなかった。試合終了後にはホームチームに関してちょっとしたヒーローインタビューのようなものがあった。試合が終わり会場から出た帰り道は、どこからともなく鳴らされる爆竹に怯えながら足早に歩いたことを今でも覚えている。
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文責:出町 一郎(でまち・いちろう)
[バスケットボール研究者・バスケットボールコーチ・大学講師]
●東京大学大学院博士課程出身(スポーツ科学,教育学)
● 元プロバスケットボールチームコーチ
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