【リトアニア編 2】
2.親子NBA選手に続け 〜サボニス・バスケットボール・センター〜
サボニスというのはリトアニア出身の元プロバスケットボール選手の名前である。近年はサボニスというとドマンタス・サボニス選手の方を想起する人も増えてきているかもしれないが、ここでいう「サボニス」というのはドマンタスの父の「アルヴィーダス・ロマス・サボニス」のことを指す。アルヴィーダスはソ連代表、リトアニア代表、NBAで活躍したリトアニアでは伝説的な選手である。アルヴィーダスが作ったのがこのサボニス・バスケットボール・センターである。これはバスケットボール・スクールである。このスクールはリトアニアの第二の都市カウナスにある。
ここでリトアニアのバスケットボールの育成組織について説明を加えたい。リトアニアではトップのリーグに所属するクラブは下部組織があったとしてもセカンドチーム等を持つ程度で子どものための育成組織を持たない。では子どもはどこでプレイするかと言うとリトアニアでは通常は6歳から18歳まではバスケットボール・スクールでプレイする。先ほどとは逆にこれらのバスケットボール・スクールはトップのチーム(プロチームなど)を持たない。ここが他のヨーロッパ諸国の育成組織と大きく違うところである。このサボニス・バスケットボール・センターはここで言うところのバスケットボール・スクールに位置づけられる。そのためこのスクールはトップのリーグに所属するような上位のチームは持っていない。リトアニアではトップのチームを持つような組織を「クラブ」と認識し、トップのチームを持たないような組織を「バスケットボール・スクール」と認識している。
さてこのサボニス・バスケットボール・センターにはコートが4面ある。スクールカラーは緑で、これはリトアニア人が好きな色である。コート横の観客席がリトアニア国旗の緑、黄、赤の色に塗り分けられている。
写真 サボニス・バスケットボール・センターのU-9の練習の様子
サボニス・バスケットボール・センターに所属する子どもは約600人いる。男子のみである。17歳から1歳刻みで6歳までのクラスがある。月謝は22ユーロ(約2,794円)から50ユーロ(約6,350円)であった。選手のリクルートはあまりしないという(ただ、ここのスクールは有名なのと所属選手が年代別のリトアニア選抜等に良く選ばれているので入会希望者は多いと思われる)。低年齢の子どもについては希望者は全員入会させている。カウナス内には6つのバスケットボール・スクールがあって入会者を増やすべく互いに競争している。
17歳から15歳までのクラスは週に4回練習し、1回試合をする。14歳から11歳までは週に3〜4回練習し、1回試合をする。10歳以下は週に3回練習するが公式戦は無い。ただ、時折ちょっとした試合らしきものをすることもある。いずれのクラスも1回の練習は1時間30分が原則である。5月末にシーズンが終わり、夏に2回キャンプを行う。年によるが6月末くらいと7月末くらいに実施する。
コーチは13人いる。そのうちバスケットボールのコーチが10人で、アスレチックコーチが3人である。全員フルタイムで雇っている。給料は1か月あたり700ユーロ(約88,900円)または800ユーロ(約101,600円)から1,000ユーロ(約127,000円)の間くらいである。少し幅があるのはカテゴリーにより違いがあることと、大会で勝った場合にボーナスが出るなどするためである。このような形でカウナスの子どもたちを指導している。
*サボニス・バスケットボール・センターは2018年にカウナスの老舗女子バスケットボールスクールと合併して、「カウナス・バスケットボール・スクール・ジャルギリス」として新たな出発をした。
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*マルチルリョーニス・バスケットボールアカデミー、ジャルギリスの視察・調査の内容は別の機会に記したい。
*リトアニア・バスケットボール連盟にて、リトアニアの育成年代のシステム、トップのリーグの仕組み等について、詳細なインタビューを行ったが、これは別な機会に記したい。
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文責:出町 一郎(でまち・いちろう)
[バスケットボール研究者・バスケットボールコーチ・大学講師]
●東京大学大学院博士課程出身(スポーツ科学,教育学)
● 元プロバスケットボールチームコーチ
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