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【リトアニア編 3】

3. リトアニアのビジネスで最も成功した男 〜シャルーナス・マルチルリョーニス・バスケットボール・アカデミー〜

 シャルーナス・マルチルリョーニス・バスケットボール・アカデミーはヴィリニュスにあるバスケットボール・スクールである。シャルーナス・マルチルリョーニスというのは、NBAで7シーズンほどプレイし、ソウル五輪でソ連代表チームのメンバーとして金メダルを取ったリトアニア人の名前である。ホテルの経営を行っていたことなどもありリトアニアで最も成功したビジネスマンの一人と称されることもある。

 このバスケットボール・スクールには男子のみ入会でき、12歳から18歳までが対象である。年度によるが計13前後のクラス設定がある。ほぼ1歳刻みで開講され、ほとんどの年齢において同一の年齢で複数のクラスが作られている。指導者は8名おり、一人で複数のクラスを担当していることもある。月謝は20〜70ユーロ(約2,540〜8,890円)である。

 ある日の練習の様子はこのようである。15歳のクラスの練習で、この日は14歳を4人入れていた。かなり強くリトアニア国内でもチャンピオンになれるレベルだという。その水準の選手の練習はどのようなのであろうか。この日は計15人が参加していた。まずコーンをジグザグに配置し、ドリブルをしていった。

 その次は二人で行うドリルである。一人がセンターラインの真ん中にボールを二つ持って立ち、もう一人がセンターラインのやや端の方に立つ。3ポイントラインとミドルラインの交差する辺りに椅子を一つ置いておく。ボールを持った選手は椅子に向かって2つのボールを交互にドリブルする。もう一人はウイングに向かって走る。ボーラーは椅子のところで1球をもう一人にパスする。そして残った1球を椅子の前で一度ドリブルチェンジしてからショットする。パスをもらった方もシュートする。何回か繰り返したらドリブルチェンジの種類を変えていく。

 それが終わると、椅子の前でドリブルチェンジを2回する形になる。そのあと、2つほどドリブルして少しゴールに近づいてからシュートする。シュートの種類も変えていく。1ドリブルでショット、レイアップ、キャッチアンドショットなどが見受けられた。これと同様のドリルはリータスのトップチームも行なっていた。リトアニアではポピュラーな練習かもしれない。

写真 シャルーナス・マルチルリョーニス・バスケットボール・アカデミーのU16チームの練習の様子

 次は3人で行う。センターライン上の二人の最初の配置は前と同じで、今度はボールを一つだけ持つ。もう一人はベースラインの外でボールを持って待っている。ドリブルして椅子のところまで行くのは同じで、このあともう一人の選手のいる方向にドリブルをする。ある程度進んだら、ボールを持っていない選手はゴールカットする。ドリブラーはバックドアの形でパスしシュートさせる。自身はベースラインのところにいる選手からパスをもらい、3ポイントライン付近からシュートする。

 その次は同じ配置からスタートし、ドリブラーは椅子のところで今度は反対側にドリブルする。ボールを持っていない選手は椅子のあるトップオブザキーの方に移動しパスをもらい、椅子をディフェンスと見立ててドリブルで抜いてジャンプシュートをする。ドリブラーはベースライン側からバスをもらいシュートする。

 次にストレッチングを行う。選手一人が前に出て、次の種目に移行する際には手を叩いて合図する。その間、ヘッドコーチは選手に対しずっと話しをしていた。これが終わると、ベースラインの3列に並び、前、横、後ろ、横という風に四角の形に走る。続いてアーリー・オフェンスのドリルを行った。サイドライン沿いにパスでボールを運ぶこと、真ん中のレーンの選手がゴールカットをすることなどが含まれていた。ウイングでピックアンドロールをしたり、ウイングの選手がゴールカットした後でコーナーの選手がリプレイスをするという要素もあった。

 これに続いていわゆる5 on 5 on 5を行った。約9分取り組んだ。ハーフコート・オフェンスの確認・説明をしたのち、選手を座らせて3分ほど話をしてこの日の練習は終了となった。ヘッドコーチによれば翌日の試合に備えて軽めにしたとのことであった。選手たちは基礎技術のツボを押さえている上に、まだまだ伸び代があるという印象を受けた。このバスケットボール・スクールは2015-16シーズンの終了後に残念ながら閉校となった。

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*ジャルギリスの視察・調査の内容は別の機会に記したい。

*リトアニア・バスケットボール連盟にて、リトアニアの育成年代のシステム、トップのリーグの仕組み等について、詳細なインタビューを行ったが、これは別な機会に記したい。

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文責:出町 一郎(でまち・いちろう)
[バスケットボール研究者・バスケットボールコーチ・大学講師]

●東京大学大学院博士課程出身(スポーツ科学,教育学)
● 元プロバスケットボールチームコーチ

twitter@ichiro_demachi

*このページに関するお問合せやお仕事のご依頼はこちらまでお願いします euro@demachi.net

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